人生の折り返し地点を過ぎた太鼓叩きの日々


by cheiici

寿が一番に満るところ

また今年も静岡の老舗酒造場が蔵を閉じることになった。

静岡市葵区山崎の「満寿一」さん。

今年の3月末で廃業されるそうだ。


吟醸を除く純米酒を好むわたくしとしてはあまり多く飲ませていただいていたわけではないが、長い歴史のある酒蔵がそれも地元で無くなってしまうのは寂しい。
特に満寿一さんは「喜久酔」さん「国香」さんと並んで、近代静岡地酒を救ったHD-1酵母を今も使う蔵元であって、感慨もひとしおである。

現社長は最後の「志太杜氏」でもあった。
かつて冷蔵庫の無い時代、暖かい気候の静岡で酒を造る技術を確立した「志太杜氏」は全国でも稀な職人集団だったのだ。

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満寿一さんの純米ラインナップは「純米吟醸」と「純米大吟醸」で、それ以外は本醸造、吟醸系ともアル添酒。

純米吟醸「満寿一」はやや甘めに感じるけれども濃厚なコクとやさしさが共存している。

そして本醸造「満寿一」は、本醸造としては傑出した出来だと思う。
純米系の旨さを引き継いで綺麗な甘み、酸味が食べ物を引き立てる。
静岡の本醸造では「磯自慢」と並ぶ銘酒に違いない。

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かつて関西の酒が旨い!というのが主流であった大正時代から、全国鑑評会で金賞を受賞した歴史をもつ蔵を閉じるのは社長の苦渋の決断だったと思う。
大きな理由は昨年末に息子さんを亡くし後継者がいなくなったことだ。
自分よりも先に息子を亡くしてしまう悲しさは想像を絶する。同時に先祖から引き継いだ家業を辞めることになるのはどれほど辛いことだろう。

事務所でお話させていただいた寡黙な社長と、昨年お見かけしたときよりも大分やつれてしまった奥さん。気丈に明るく今後や経緯についてお話くださるお嫁さん、帰り際に「ありがとうございました!」と元気に挨拶してくれた小学生の息子さんの姿が頭から離れない。
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by cheiici | 2012-03-25 15:40 | 純米酒